続・だからウイスキーが必要なんだ

そもそもどうしてウイスキーを飲み始めたかという話。

私が最初にウイスキーを飲んだのは・・・正直なところ記憶にない。確か安い居酒屋で飲んだウイスキーだったと思う。びりびりとした刺激を舌に感じて、美味しいとはとても思えなかった。けれど他のお酒がそうであるように、物を選べばきっと美味しいものなのだろうと心の片隅で思っていた。

それからしばらくして二十五歳になった。二十五歳は自分の稼いだお金でできることが増えてくる年だった。背伸びしたいと思ったら幾らでも背伸びできる。そんな折、バーに行ってみよう、そこで思い切り美味しいお酒を飲んでみようと思った。新宿のとあるオーセンティックなバーに私は単身乗り込んだ。

ウイスキーを飲めるようになりたいんですとバーテンダーに素直に言ってみると、小娘相手でも快く付き合ってくれた。最初に飲んだのはジョニーウォーカーの炭酸割り。ジョニーウォーカーには赤、青、黒と種類があって、黒はジョニ黒なんて呼んだりするんですよ、といった小話を挟んでくれる。続いて水割り、ロック、ストレートと飲み進めた。どれも美味しくて、酔う感覚を感じないほどすいすい飲んでしまった。私がその日気に入ったのは響とバランタイン、つまり華やかな香りのウイスキーの中でも王道のものだった。

どれも美味しかったですとお礼を言ったら、あなたには素質があったんですよ、私はその背中を押しただけですからと軽妙に返された。バーテンダーはこんな上手いことがすらすらと口から出てくる生き物なんだろうか・・・と良い気持ちになりながら私は帰った。今思い返せば、二十代の女が来る店にしては少々渋すぎる場所だった気がする。誰かと談笑しながら飲むというよりは、寡黙な男性が一杯飲んで帰るような雰囲気の店だった。それでもその後何回か行って、少し大人になったような気持ちで静かにお酒を飲んだ。今はもう大人なので、あそこで飲んでもきっと背伸びするような気持ちは味わえないだろうなと思う。

何はともあれ、そのおかげで私はウイスキーを飲むようになった。しょっちゅうというほどではないけれど、今日は自分にお疲れ様を言おうと思ったときや、以前書いたような「これは大変だ」と思ったときに。一人で飲むときもあれば誰かとのんびり飲むときもある。時間をかけて飲むお酒は三十一歳になった私によく合っていると思う。

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