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クリスマスソングからは逃げられない、ひとつの曲をじっくり聴くということ

ハロウィンが終わった日からクリスマスソングを聞かされ続けると控えめに言ってうんざりする。そうですよね?先日はとうとうクリスマスソングを聴き続けることで心に悪影響を及ぼすというニュースまで流れていたけれど、そんなの統計をとるまでもなく常識的に考えれば誰でもわかると思う。マライア・キャリー、ワム、ジョン・レノン。彼らに罪はないのだけれど、デパートや本屋、ふらっと入ったカフェでも流れているとさすがに飽きる。

そういうわけでクリスマスとは関係ない音楽の話をする。

今年の春、縁があってスピッツをトリビュートした文学作品を出すことになった。いわゆる同人活動である。ハチミツというアルバムに収録されている曲ごとに絵や小説を作って一冊の本に仕上げようとしたのだけれど、これがなかなか骨の折れる仕事だった。小説を書くことと本を作ることはまるで違う。小説の執筆自体はとても面白かった。トリビュート作品を作るのは初めてだったし、Yという自分の好きな曲をもとにして小説を書けることが嬉しかった。

執筆中は何度もその曲を聴くので、頭がおかしくなるんじゃないかと思うときがあった。その一方で、音楽とイメージと言葉がひとつずつ繋がり、自分の中で融合していくことが心地良いのも事実だった。私は小説を書くとき、登場人物がどのような場所でどのような景色を見ているか何度もイメージする。どのような表情で、どのように話すか。曲のメロディや歌詞に合わせてイメージを膨らませることで、その曲が持つ温かさや物悲しさを物語に練り込んでいった。

Yは温かい希望と救われない絶望の両極端がこめられた曲だ。だから物語もそれを表現するように進み、書き終わったときは心身ともにぐったりと疲れた。それでも振り返ってみれば充実した時間だった。またやろうと思えるほどの気軽さでできることではないけれど。

曲を聴かされ続けることも、意識的に聴き続けることもそこそこ大変なのである。そういえばとある靴下屋のBGMは年中アバだ。飽きないのだろうか。

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