野球について

私が野球を真剣に観るようになったのは昨年からで、理由は何か楽しいことがしたいからだった。当時は人間関係で酷く落ち込んでいて、毎日心がぎしぎしと軋んでいた。そんな折に友人と野球観戦することになった。ルールもろくにわかっていなかったけれど、よく晴れた神宮球場で飲んだビールはものすごく美味しかった。これは野球観戦における素晴らしい点の一つで、昼間からビールを飲むことが許されるどころか歓迎されているのである。おかげで神宮球場が好きになり、自然とヤクルトを応援するようになった。

試合を何度か観るようになると試合の内容が気になってくる。誰が打ったか?誰が投げたか?他のチームの強さの理由まで考えるようになる。次第に野球は技術、モチベーション、育成、チームビルディング力等あらゆる要素が絡み合った複雑なゲームなのだとわかってくる。それぞれの要素を掘り下げていくと単なる勝ち負けでなくいろんな視点で楽しめる。

今年はチームマネジメントや気持ちの切り替え方について考えることが多かったので、それと照らし合わせて観ることが多かった。腕のいい選手を揃えることができてもチーム内の連携をつくることは別物だなとつくづく思ったし、ここぞという場面で打たれてしまったピッチャーがほんの僅かな時間の間に立て直して新たな一球を投げる姿は胸に迫るものがあった。

特にヤクルトの小川選手は今季リリーフに転向した直後酷い負け試合をしてしまい、その後先発に戻され更に怪我までするというドラマの連続で見ている側はハラハラしっぱなしだった。でもそんな選手がチームを勝利に導いたときの喜びは何にも替えがたい。その後数日間、時には数ヶ月間しみじみと勝利を味わう。他にも贔屓のチームではないけれど、ベイスターズの濱口投手が日本シリーズで見せたピッチングは新人だからこそ思いっきり投げるという瑞々しさを感じた。新人とベテランの違いを味わうのも醍醐味だと思う。

球場やファン、応援方法にもそれぞれの面白さがある。カープのスクワット応援には仰天したし、東京ドームで大量の巨人ファンがタオルをぶんぶん振り回す光景は圧巻である。ヤクルトはその中でもだいぶのんびりしている。得点が入ったときのリアクションは傘を振りながらの東京音頭だし、ファンも応援したり眺めているだけだったりでそれぞれマイペースだ。

ヤクルトにとって今年は厳しいシーズンとなってしまった。監督は退任し、一からやり直しの状態にいる。それでもどこかで自分と照らし合わせて「まあコツコツやっていこう」と思えてくる。野球も人生も長距離戦である。はやく温かい陽射しを浴びながら神宮球場でビールが飲みたい。

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