それは本当にトイレで売る必要があるのか

男女混浴に続いてトイレの話。

ドイツからイタリアに向かうとき、デュッセルドルフの空港を利用した。乗り換え時間は2時間ほどなので、ここぞとばかりに本を開いて読書を満喫していると、トイレに行きたくなった。荷物をよいしょと背負い、トイレのドアを開ける。前には女性がひとり並んでいる。順番がきたとき、小さな販売機が目に入り、視線はそのまま固定されてしまった。

バイブレーター。間違いなくそう書いてある。

個室に入って用を済ませ、手を洗うと私はもう一度じっくり販売機を見た。そこには間違いなくバイブレーターとコンドーム、タンポンが売られていた(ナプキンはなかった。さすがタンポン主流派の国である)。

ちょっと落ち着こう。タンポンはわかる。コンドームもわかる(わかるか?)。しかしバイブレーターである。一体どこの女性が空港のトイレでバイブレーターを見つけて「ああ、助かった! ここで買っていこう」となるのだろうか。それとも女を33年しかやっていない私には、まだ未知の領域があるのだろうか。真の淑女とは、バイブレーターのひとつくらい鞄に忍ばせるものなのか。どう考えても「ねぇママ、これなに?」と子供に質問されて返事に詰まる母親のほうが多いような気がするのだけれど……。私は周囲の視線に気づかないふりをしながら販売機を観察し続けた。バイブレーターは電池を入れて動かす大げさなものではなく、指先につけて使用するタイプのものだった。そうか、世の中にはこんなものがあるのか……。

調べてみると、ミュンヘンやイギリスのヒースロー空港のトイレでもバイブレーターは売られているらしい。ちなみにオランダのスキポール空港では見かけなかった(オランダに無いなんて意外だ)。ヨーロッパならどこにでもあるというわけでもないのだろう。ちなみにヒースロー空港の男子トイレでは精力剤が売られていることもわかった。この精力剤も誰かが「ああ、助かった!」と買っていくのだろうか。やっぱりどうしても「ねぇパパ、これなに?」と聞かれて頭を悩ませる父親の姿を私は想像してしまう。

こんなにも悶々とするくらいなら、記念にバイブレーターを買って帰るべきだった気がする。たった4ユーロだし。それともこれはジョーク商品なのだろうか?「空港でバイブレーターが売ってたからお土産に買ってきたよ!」いやいや、そんなまさかね……。

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