33歳のハロー、グッドバイ

先日、何十着もの服をクローゼットから旅立たせた。それらを売って必要な人にワクチンを届ける仕組みがあると聞き、これを機に長い間袖を通していない服に別れを告げようと思い立ったのである。服を取り出しては悩み、お世話になりましたと心の中で声をかけながら紙袋に詰めていると、ふとベージュのストッキングが一組も見当たらないことに気がついた。20代の頃、夏でも冬でも仕事をするときは必ず履いていて、破れたときのために予備を職場のデスクに置いておいたくらいなのに。一体、あれらはどこへ消えてしまったというのか。

記憶を掘り返してみると、一時期肌が敏感になってしまい、それを機にもう一切ストッキングは履くまいと思うようになったのだった。そんなことが可能なのかと、真面目にストッキングを履いて仕事をしている人に訝しがられるかもしれない。それが案外、問題ないものである。ここ数年、私は靴下にスニーカーで出勤しており、どうしてもあらたまった場所に行くときだけ革靴に履き替える。すっかりその生活に慣れてしまい、今ではヒールどころかパンプスを履いて外に出ることもほとんどない。だって、スニーカーのほうがずっとたくさん歩くことができるから。オフィスカジュアルというあいまいな規範に沿うことよりも、自分の居心地の良さのほうがずっと大切になっていたのだ。

こんなふうに手元から消えていったものもあれば、欠かせなくなったものもある。それはオイルだ。もちろん、オリーブオイルのことではない。ホホバオイルをはじめとした、肌を保湿する目的のオイルである。加齢というと一言で片付いてしまうけれど、化粧水を大量に吹きかければなんとかなる時代は過ぎ去りつつある(我ながら書いていて胸が痛くなる話だ)。最近はお風呂上がりにホホバオイルをやさしく肌に馴染ませる。この夏からはネイル専用のオイルも購入し、かさつく指先に垂らすのであった。そんな私を見てため息をつく人がいるかもしれないけれど、最近のオイルは上等で良い香りのするものも多い。私が使っているネイルオイルにはラベンダーやバニラが配合されていて、日常的に使うのもなかなか楽しいものである。

来年にはまた新たな別れと出会いがあるんだろうか……と思い、つい周りを見渡してしまう。目下、私が迎えたいと思っているのは植物である。何かを育てたいと思いながら、機を逸している。別れを告げそうなものについては、まだ何も思い当たらない。

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