タクシー・ドライバー

世の中でタクシーの運転手ほど、当たり外れの激しいものは無いと思う。本当に。

私は東京に住んでいて、ほとんどの用事が地下鉄で済むのでタクシーに乗ることはほとんど無い。しかし先日、重い荷物を抱えなければならなかったので、タクシーに乗った。するとこれは「アタリ」だった。「この道、朝はすごく混むんですよ、知ってました?」から始まり、「最近、外国の人と交流するのにハマっちゃって」と趣味の話に飛んでいく。聞いてみると、海外の人とチャットすることのできるアプリで、慣れない英語を使ってお互いの国のことを話すそうである。最近やりとりするのはブラジルやアルゼンチンの人たちで、子供や日頃の食事の写真を送り合って楽しんでいるのだという。

こういう話を聞いていると、定年退職後のオジサンにはこんな楽しみ方もあるのだなと思う。

以前、博多でタクシーに乗ったときは「二日酔いだろ?」といきなり聞かれ、「お酒が美味しくてつい飲み過ぎた」と言うと「でしょう。日本全国、津々浦々と渡ってきたけどね、博多は最高だよ。人も食べ物もね」と言われた。彼はどんな人生を送ってきたのだろう。鹿児島で乗ったときには、「最近、サーフィンが趣味でね」と語られた。色んな人がいる。

時にはもちろん、ハズレにも会う。以前、シンガポールで友人とタクシーに乗ったときは、行き先を告げてもウンともスンとも言わぬ、むすっとしたドライバーに会ってしまった。一般道を高速道路並みの速さですっ飛ばすし、進路変更するときにウインカーを出さない。あのドライブには流石に冷や汗が出た。もちろんシンガポールは観光のためにあらゆるものが訓練されているので、他のタクシーはとても友好的だったし、幾らか小銭を負けてくれた人もいた。

このご時世でここまで当たり外れな事象にお目にかかれるのは、ある意味では貴重な体験なのかもしれない。だって最近は、調べれば大抵のことは検討がついてしまうから。

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