祖父と曾祖母と祖父

十年以上前に他界した祖父を夢で見た。祖父は夢の中で、息を引き取ったばかりのところだった。しかし突如として生き返った。家族が祖父の体を取り囲み、嘆き悲しんでいるところで目を開けて起き上がったのだ。私も周りも、大変驚いた。祖父は何かを告げて、今度こそ本当に、永い眠りについた。

私は基本的に、夢の内容を具体的なところまで覚えない。夢日記もつけない。余程衝撃的な夢でない限り、すっぱりと綺麗に忘れる。しかしこの夢は「あまりにも」衝撃的だったので覚えている。なにせ祖父が夢に出てきたのはそれが人生で初めてだったからだ。私は祖父を愛していた。他界したときは文字通り大泣きした。しかしそれでも、祖父は今の今まで私の夢に現れたりはしなかった。だから夢の中で祖父が何を伝えようとしたのか思い出せないことを、私は心から残念に思っている。

この夢の他に、もう一つ衝撃的な夢を覚えている。これも既に他界していた、父方の曾祖母と祖父の夢である。

私は祖父と電話をしている。「大丈夫か」と祖父が私に尋ねる。私は「大丈夫だ」と答える。そのやりとりをしているときに曾祖母が現れ、「そんな電話、もういいから。みんなで食事をしにいきましょう」と声をかけてくる。私は従順に頷き、電話を切り、杖をついて歩く曾祖母についていく。曾祖母は百歳になっても自らの足で歩き、外食をする人だった。百三歳のときに風邪をこじらせて他界した。

この夢は私の心に随分と長く残っている。震災直後に見た夢だったということ、そして彼らが私の夢に現れたのは、やっぱり、この時が初めてだったということがこの夢をより印象付けた。

夢にしろ、現実にしろ、私は死者を近くに感じる。彼らは常に私の側にいる。目に見えない火の粉が私に降りかかろうとするとき、彼らはそれをふうっと吹き飛ばす。見逃してしまいそうなほど細い幸運の糸を、静かに手繰り寄せる。当たり前のことを私は時々忘れるけれど、しばらくすれば必ず、このことを思い出す。

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